PA6(6ナイロン)とは

PA6(6ナイロン)とは|靭性と摺動性に優れた汎用エンプラ

PA6(6ナイロン)は、靭性・耐摩耗性・摺動性のバランスがよく、機械部品でもっとも広く使われるエンジニアリングプラスチックのひとつです。押出材のほか、ガラス繊維や炭素繊維で強化したグレード、導電性を持たせたグレードが流通しています。設計上の最大の注意点は吸水による寸法変化で、吸水率は 1.8%(23℃・24時間)とエンプラのなかでは大きい部類です。

掲載数値は参考値です。保証値ではありません。 測定規格・試験片形状・グレード・ロットにより変動します。設計・採用にあたっては、メーカー発行の最新データシートでご確認ください。

PA6(6ナイロン) の基本物性

TPS-N6 NC(東レプラスチック精工/無充填ナチュラル)の物性値(参考値)
項目数値備考
比重(23℃)1.14軽い
引張強度75 MPa
引張伸び200 % 超非常に粘る
曲げ強度100 MPa
曲げ弾性率2.50 GPa
アイゾット衝撃値(ノッチ付)70.0 J/m
ロックウェル硬度R112
吸水率(23℃・24時間)1.8 %寸法変化の主因
線膨張係数8.0×10-5/℃
荷重たわみ温度(1.82MPa)65 ℃
連続使用温度70 ℃
融点225 ℃結晶性樹脂
燃焼性(UL)HB

PA6(6ナイロン) の特徴

1. 靭性が高く欠けにくい

引張伸びが 200%を超え、叩いても欠けにくい粘り強さを持ちます。衝撃が加わる部品や、金属に当たる部位の当て材として広く使われます。POM と比べると、寸法精度では POM、耐衝撃では PA6 という使い分けになります。

2. 吸水すると寸法が変わる

PA6 を扱ううえで最も重要な性質です。吸水率 1.8%(23℃・24時間)はエンプラのなかで大きく、湿度環境によって部品の寸法が動きます。長期的には数%の膨潤もあり得るため、はめあいやクリアランスの設計には吸水後の寸法を見込む必要があります。一方で吸水すると靭性は上がるという側面もあります。

3. 摺動性と耐摩耗性

自己潤滑性があり、無給油で使える摺動部品に向きます。ギヤ、軸受、ローラー、ガイドレールなどが代表的な用途です。二硫化モリブデンやオイルを含浸した摺動グレードもあります。

4. 強化・機能グレードが豊富

ガラス繊維30%強化(TPS-N6 G30)で剛性と耐熱を上げたもの、炭素繊維強化(TPS-N6 CF)で導電性と剛性を高めたもの、カーボン配合の導電グレード(PA 910CV、体積抵抗率 103〜105 Ω·m)など、目的に応じて選べます。

PA6(6ナイロン) の主な用途

  • 機械部品 — ギヤ、カム、軸受、ローラー、スプロケット
  • 搬送設備 — ガイドレール、チェーンガイド、ライナー
  • 治具 — 金属部品を傷付けたくない当て材、位置決め治具
  • 静電気対策 — 導電グレードによる搬送治具、作業台のカバー
  • 電気・電子 — 絶縁部品(吸水による特性変化に注意)

PA6(6ナイロン) の切削加工で注意すること

  • 吸水を前提に段取りする — 素材は入荷時点ですでに吸湿しています。高精度部品では、荒加工 → 放置(なじませ)→ 仕上げ、の順で寸法を追い込むと安定します。
  • 切りくずが長く繋がる — 粘りが強いため切りくずが絡みやすい材料です。チップブレーカー付きの工具や、送り・切込みの見直しで分断させてください。
  • 加工熱で膨らむ — 熱伝導率が低く加工熱が逃げにくいため、加工直後は寸法が大きめに出ます。測定は冷えてから行ってください。
  • 薄物は反りやすい — 残留応力と吸水の両方で反ります。板から薄板を削り出す場合は、両面から均等に落とすと反りが抑えられます。

他の材料との比較

比較対象PA6(6ナイロン) との違い
PA66(66ナイロン)耐熱・剛性・硬さは PA66 が上(融点255℃/HDT 90℃)。靭性と加工しやすさ、吸水の少なさでは PA6 がやや有利
MCナイロンMCナイロンはモノマーを型内で重合した鋳造ナイロン。分子量が高く、大径丸棒や厚板が得られ、耐摩耗性・剛性が上。PA6 押出材は小径・薄物やコスト面で有利
POM寸法安定性(吸水0.2%前後)と摺動性は POM が上。耐衝撃性と対金属の当たりの優しさは PA6 が上
PBT吸水率は PBT が圧倒的に低く(0.09%)、寸法安定性で有利。靭性と耐摩耗性は PA6 が上

全材料の横並び比較は 樹脂・エンプラ 物性比較表 をご覧ください。

PA6(6ナイロン) の物性表とお取り扱いについて

グレード別の物性表(PDF)はこちらからダウンロードできます

PA6(6ナイロン) は現在、定尺品としての在庫のお取り扱いがありません。ご用途をお知らせいただければ、手配の可否と納期をお調べします。まずはお問い合わせください。

PA6(6ナイロン) に関するよくあるご質問

PA6 と PA66 はどちらを選べばよいですか?

耐熱と剛性が要るなら PA66(融点255℃、荷重たわみ温度90℃)、靭性と加工性を重視するなら PA6 が向きます。吸水率は PA6 が1.8%、PA66 が1.2%で、PA66 のほうがやや低くなります。

PA6 と MCナイロンは何が違いますか?

製法が違います。MCナイロンはモノマーを型の中で重合させた鋳造ナイロンで、分子量が高く、大径の丸棒や厚板が作れます。耐摩耗性・剛性でも上回ります。PA6 押出材は小径品や薄板、コスト面で有利です。

ナイロンの吸水はどのくらい寸法に影響しますか?

吸水率は23℃・24時間で1.8%です。実際の寸法変化は環境の湿度・部品の肉厚・時間によって変わり、長期では数%の膨潤もあり得ます。はめあい部やクリアランスは吸水後を見込んで設計してください。

PA6 は何℃まで使えますか?

連続使用温度は70℃、荷重たわみ温度(1.82MPa)は65℃が目安です。融点は225℃ですが、荷重下ではそれよりはるかに低い温度で変形します。数値は参考値です。

KIRIURI.COM で PA6 は買えますか?

PA6 押出材の定尺在庫のお取り扱いは現在ありません。MCナイロン(三菱ケミカル MC901 ほか)はお取り扱いがあります。PA6 についてはご用途をお知らせいただければ手配の可否をお調べします。

出典

本ページの数値は、東レプラスチック精工が公開する切削用素材「TPS-N6 NC」の物性表、および タキロンポリマー「物性資料 タキロンポリマー製品 関連物性」(p.82)のPA 910CV の値(いずれも2026年8月取得)からの転記です。数値は測定規格・グレード・ロットにより変動します。正確な値はメーカーの最新データシートをご確認ください。

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