ベスペル(Vespel/PI ポリイミド)とは

ベスペル(Vespel/PI ポリイミド)とは|グレードの選び方と特性

ベスペル(Vespel)は、デュポンのポリイミド(PI)樹脂です。 代表グレードの SP-1 は連続使用温度 300℃、断続では 480℃ に耐え、高温下での寸法安定性と電気絶縁性に優れます。 充填材の異なる複数のグレードがあり、低摩擦・低熱膨張・導電性・低アウトガスなど、用途に応じて選び分けられるのが最大の特徴です。

掲載数値は参考値です。保証値ではありません。 測定規格・試験片形状・グレード・ロットにより変動します。設計・採用にあたっては、メーカー発行の最新データシートでご確認ください。

ベスペル(PI)の基本物性

ポリイミド(ベスペル SP-1)の物性値(参考値)
項目数値備考
連続使用温度300 ℃SP-1
断続使用温度480 ℃SP-1
密度(比重)1.42〜1.45 g/cm³グレードにより変動
引張強さ約 90 MPa
吸水率約 0.03 %低吸水
電気絶縁性優れる(SP-1)SP-202 は導電グレード
耐摩耗性優れる充填グレードでさらに向上

ベスペルの特徴

1. 極低温から 300℃ までの広い使用温度域

SP-1 は極低温から 300℃ までの温度で使用でき、断続的には 480℃ に耐えます。 PEEK(連続260℃)を上回る耐熱域を持ち、高温環境の部品に採用されます。

2. 高温下でも寸法が安定する

吸水率が約 0.03% と低く、高温下での寸法安定性に優れます。 特に SP-22 は熱膨張率がきわめて低く、温度変化のある環境での精密部品に適します。

3. 充填材でグレードを選び分けられる

無充填の SP-1 を基本に、グラファイト強化による低摩擦グレード、導電グレード、 真空・乾燥環境向けの低アウトガスグレードなどが用意されています。用途に合わせた最適化がしやすい材料です。

4. SCP シリーズは耐プラズマ性・耐薬品性が高い

SCP シリーズは SP-1 より耐プラズマ性と耐薬品性に優れており、半導体製造装置など過酷な環境で使われます。

ベスペル グレードの選び方

ベスペル SP/SCP シリーズ グレード比較
グレード特徴向く用途
SP-1 無充填の基本グレード。優れた耐摩耗性と電気絶縁性。極低温〜300℃で使用可。伸び率が最も大きい 絶縁部品、汎用の高温部品
SP-21 グラファイト強化。低摩擦特性 高温下の軸受、ブッシュ、摺動部品
SP-211 SP-21 よりさらに低い摩擦係数 無潤滑での摺動部品
SP-22 熱膨張率がきわめて低く、寸法安定性に優れる。グラファイト強化 温度変化のある環境の精密部品
SP-3 真空・乾燥環境でのガス放出を抑制 真空機器、宇宙用途、乾燥環境の摺動部
SP-202 導電性グレード(<102 Ω)。グラファイト強化 静電気を逃がしたい部位、除電部品
SCP-5000 系
SCP-5000/SCP-5009/
SCP-5050/SCP-50094
SP-1 より耐プラズマ性と耐薬品性に優れる 半導体製造装置、プラズマ環境の部品

目的から選ぶ早見

  • 電気絶縁が必要 → SP-1
  • 摺動・低摩擦が必要 → SP-21、さらに低摩擦なら SP-211
  • 熱膨張を抑えたい → SP-22
  • 真空環境・アウトガスを抑えたい → SP-3
  • 静電気を逃がしたい(導電) → SP-202
  • プラズマ・薬品環境 → SCP-5000 系

ベスペルの主な用途

  • 半導体製造装置 — プラズマ環境の部品、絶縁部品、ウェハ搬送部品
  • 真空機器 — 低アウトガスが求められる摺動部(SP-3)
  • 高温摺動部 — 無潤滑の軸受、ブッシュ、シール(SP-21/SP-211)
  • 精密機器 — 温度変化下での寸法安定が必要な部品(SP-22)
  • 電気絶縁部品 — 高温下で絶縁性を保つ必要がある部位(SP-1)

他の耐熱樹脂との比較

材料耐熱の目安引張強さベスペルとの関係
PBI荷重たわみ温度 410℃約150 MPa耐熱・強度ともベスペルを上回る。最も高価
PI(ベスペル)連続 300℃/断続 480℃約90 MPaグレードが豊富で用途に合わせやすい
PAI(Ti5013)250℃約85 MPa強度は近いが耐熱はベスペルが上
PEEK長期 260℃110〜116 MPa引張強さは PEEK が上。コストと加工性で有利

全材料の横並び比較は 樹脂・エンプラ 物性比較表 をご覧ください。

KIRIURI.COM のベスペル取扱品

ベスペルに関するよくあるご質問

ベスペルは何℃まで使えますか?

代表グレードの SP-1 で、連続使用温度が 300℃、断続では 480℃ が目安です。極低温側にも対応します。ただし荷重条件や雰囲気によって使用可能な温度は変わるため、実使用条件での確認をおすすめします。

ベスペルと PEEK はどちらを選ぶべきですか?

耐熱性はベスペルが上で、SP-1 の連続使用温度 300℃ に対し PEEK は 260℃ です。一方、引張強さは PEEK が 110〜116 MPa とベスペル(約90 MPa)を上回り、コストと切削加工性でも PEEK が有利です。260℃ 以下で強度が必要なら PEEK、300℃ 前後の耐熱や高温下の寸法安定性が必要ならベスペルが目安になります。

ベスペルのグレードはどう選べばよいですか?

電気絶縁が必要なら SP-1、摺動・低摩擦なら SP-21(さらに低摩擦なら SP-211)、熱膨張を抑えたいなら SP-22、真空環境でアウトガスを抑えたいなら SP-3、導電性が必要なら SP-202、プラズマ・薬品環境なら SCP-5000 系が目安です。

SP-1 と SCP-5000 の違いは何ですか?

SCP シリーズは SP-1 と比べて耐プラズマ性と耐薬品性に優れています。半導体製造装置などプラズマや薬品にさらされる環境では SCP シリーズが選ばれます。

真空環境で使えるベスペルはありますか?

SP-3 が該当します。真空・乾燥環境でのガス放出を抑制したグレードで、真空機器や宇宙用途の摺動部に使われます。

出典

本ページの数値およびグレード特性は、デュポンが公開するベスペル製品情報および公開技術資料をもとにした参考値です(2026年8月時点)。 数値は測定規格・グレード・ロットにより変動します。正確な値はメーカーの最新データシートをご確認ください。 Vespel はデュポン社の登録商標です。

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