PBT(ポリブチレンテレフタレート)とは

PBT(ポリブチレンテレフタレート)とは|低吸水で電気特性に優れたエンプラ

PBT(ポリブチレンテレフタレート)は、ポリエステル系の結晶性エンジニアリングプラスチックです。吸水率 0.09% という低さと、良好な電気絶縁性を併せ持ち、湿度の影響を受けたくない絶縁部品や精密部品に使われます。引張伸びが 200% を超える粘り強さも特徴ですが、荷重たわみ温度(1.82MPa)は 68℃ と、高温下で荷重を受ける用途には向きません。

掲載数値は参考値です。保証値ではありません。 測定規格・試験片形状・グレード・ロットにより変動します。設計・採用にあたっては、メーカー発行の最新データシートでご確認ください。

PBT の基本物性

PBT 無充填グレード(クレハエクストロン)の物性値(参考値)
項目数値備考
比重1.3
引張強さ49 MPa
引張伸び200 % 超粘り強い
曲げ強さ93 MPa
曲げ弾性率2,550 MPa
アイゾット衝撃強さ(ノッチ付)49 J/m
ロックウェル硬さM75
吸水率(23℃・浸漬24h)0.09 %ナイロンの20分の1
荷重たわみ温度(1.82MPa)68 ℃高温荷重下には不向き
融点225 ℃結晶性樹脂
ガラス転移点60 ℃
線膨張係数10×10-5/℃
体積抵抗率5×1016 Ω·cm絶縁性が高い
燃焼クラスHB 相当

PBT の特徴

1. 吸水率 0.09% で寸法が安定する

PBT の代表的な長所です。ナイロン(PA6 で 1.8%)の20分の1程度しか吸水せず、湿度が変わっても寸法・電気特性がほとんど変化しません。梅雨時と冬とで精度が変わっては困る部品に向きます。

2. 電気絶縁性が高く安定している

体積抵抗率 5×1016 Ω·cm、誘電率(1MHz)3.3 と良好な電気特性を持ちます。吸水しないため湿度が上がっても絶縁性能が落ちにくい点が、ナイロン系との明確な差です。コネクタや絶縁部品に使われる理由がここにあります。

3. 粘り強く欠けにくい

引張伸びが 200% を超え、同じポリエステル系の PET(9%)とは対照的に粘ります。衝撃で欠けにくく、薄肉部やスナップフィット的な形状にも対応しやすい材料です。

4. 高温で荷重を受ける用途には向かない

融点は 225℃ ですが、荷重たわみ温度(1.82MPa)は 68℃、ガラス転移点は 60℃ です。温度が上がった状態で荷重がかかると早期に変形します。この用途には PPS や PEEK、あるいはガラス繊維強化 PBT を検討してください。

PBT の主な用途

  • 電気・電子 — コネクタ、絶縁ワッシャ、端子台、基板押さえ
  • 精密機械部品 — 湿度で寸法が動いては困る位置決め部品
  • 自動車 — 電装部品のハウジング
  • 治具 — 検査治具、絶縁を兼ねた保持部品
  • 摺動部品 — 軽荷重のギヤ、ブッシュ

PBT の切削加工で注意すること

  • 結晶性樹脂特有の後収縮 — 加工後に寸法がわずかに縮むことがあります。高精度部品では荒加工後のアニールが有効です。
  • ガラス転移点が 60℃ と低い — 加工熱で60℃を超えると軟化して寸法が出にくくなります。切削油による冷却を十分に行ってください。
  • 切りくずが絡む — 伸びが大きく粘るため、切りくずが長く繋がります。チップブレーカーや送りの調整で分断させてください。
  • 薄物の反り — 片側だけ大きく削ると反ります。両面から均等に落とすと安定します。

他の材料との比較

比較対象PBT との違い
PET(結晶性PET)同じポリエステル系。剛性・硬さ・耐熱・耐摩耗性は PET が上。靭性(伸び200%超)は PBT が上
PA6吸水率で PBT が圧倒的に有利(0.09% 対 1.8%)。強度・耐摩耗性は PA6 が上
POM摺動性・剛性・耐疲労性は POM が上。電気特性の安定性と難燃面では PBT が有利
PPS耐熱・耐薬品性は PPS が圧倒的に上(連続200℃超)。PBT はコストで有利

全材料の横並び比較は 樹脂・エンプラ 物性比較表 をご覧ください。

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PBT に関するよくあるご質問

PBT と PET はどう違いますか?

どちらもポリエステル系ですが、PBT のほうが粘り強く(伸び200%超)、PET のほうが硬く剛性と耐熱性があります。衝撃が加わる部品や電気絶縁部品は PBT、剛性と耐摩耗性が要る部品は PET が向きます。

PBT は吸水しますか?

ほとんどしません。吸水率は23℃・浸漬24時間で0.09%で、PA6(1.8%)の20分の1程度です。湿度が変わっても寸法・電気特性が安定します。

PBT は何℃まで使えますか?

荷重たわみ温度(1.82MPa)は68℃、ガラス転移点は60℃です。融点は225℃ですが、荷重がかかる状態では60〜70℃付近から変形が始まります。高温荷重下の用途には向きません。数値は参考値です。

PBT は絶縁材料として使えますか?

体積抵抗率5×1016Ω·cm と良好な絶縁性を持ちます。吸水しないため湿度が上がっても性能が落ちにくく、コネクタや端子台などに広く使われています。

KIRIURI.COM で PBT は買えますか?

PBT(ナチュラル)の板をお取り扱いしています。必要なサイズ・数量での切売りに対応しています(材質・サイズによっては定尺販売のみのものもあります)。下記の商品一覧からご確認ください。

出典

本ページの数値は、クレハエクストロンが公開する PBT 無充填グレードの物性表、および東レプラスチック精工が公開する切削用素材「TPS-PBT NC」の物性表(いずれも2026年8月取得)からの転記です。数値は測定規格・グレード・ロットにより変動します。正確な値はメーカーの最新データシートをご確認ください。

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