PET(ポリエチレンテレフタレート)とは
PET(ポリエチレンテレフタレート)とは|寸法安定性と耐摩耗性に優れた結晶性エンプラ
切削加工に使う PET は、飲料ボトルの非晶性 PET とは別物の結晶性 PET(TP-PEX などの商品名で流通)です。吸水率 0.04% と極めて低く、湿度で寸法が動かないことが最大の持ち味です。曲げ応力 129 MPa と剛性も高く、POM の代替として精密部品や摺動部品に使われます。
PET の基本物性
| 項目 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 比重 | 1.41 | POM と同程度 |
| 引張降伏応力 | 91 MPa | POM(65 MPa)より高い |
| 引張破壊時呼びひずみ | 9 % | 粘りは小さい |
| 曲げ応力 | 129 MPa | 汎用エンプラでは高い水準 |
| 曲げ弾性率 | 3,600 MPa | 剛性が高い |
| 圧縮降伏応力 | 111 MPa | — |
| ロックウェル硬さ(Mスケール) | 95 | POM(78)より硬い |
| 荷重たわみ温度(0.45MPa) | 210 ℃ | — |
| 荷重たわみ温度(1.80MPa) | 89 ℃ | 荷重下では大きく下がる |
| 連続使用温度 | 100 ℃ | POM(90℃)より高い |
| 吸水率 | 0.04 % | ナイロンの40分の1以下 |
| 耐燃性 | 自消性 | POM は可燃性 |
| 線膨張率 | 7.4×10-5·K-1 | 汎用樹脂より小さい |
PET の特徴
1. 吸水率 0.04% で寸法が動かない
PET を選ぶ最大の理由です。吸水率 0.04% は PA6(1.8%)の40分の1以下で、湿度が変わっても部品の寸法がほとんど変化しません。精密な位置決め部品や、季節をまたいで精度を保ちたい治具に向きます。
2. POM より硬く、剛性が高い
曲げ応力 129 MPa、曲げ弾性率 3,600 MPa、ロックウェル硬さ M95 はいずれも POM(94 MPa/3,000 MPa/M78)を上回ります。たわみを嫌う部品では PET が有利です。一方で引張破壊時呼びひずみは 9%(POM は 60%)と粘りに乏しく、衝撃には弱い点が弱点になります。
3. 耐摩耗性・摺動性がよい
硬さと低吸水を活かした摺動部品に使われます。相手材を選びますが、ギヤ・カム・軸受・ガイドなどで POM の代替になります。
4. 自消性で燃え広がりにくい
POM が可燃性であるのに対し、PET は自消性です。火気のある環境や、燃焼性に制約のある設備での置き換え候補になります。
PET の主な用途
- 精密機械部品 — 位置決め部品、絶縁ワッシャ、精密ギヤ
- 摺動部品 — 軸受、ブッシュ、ガイド、カム
- 電気・電子 — 絶縁部品、コネクタ関連治具
- 食品機械 — 洗浄水にさらされるライン部品
- 治具 — 湿度で寸法が動いては困る検査治具
PET の切削加工で注意すること
- 欠けやすい — 伸びが 9%と小さく、角部や薄肉部が欠けやすい材料です。工具の切れ味を保ち、抜け際の送りを落としてください。
- 切込みを深くしすぎない — 硬く脆いため、無理な切込みはクラックの起点になります。仕上げ代を残して軽く撫でると安定します。
- 残留応力によるクラック — 結晶性樹脂で内部応力が残りやすく、厚物から深い穴やポケットを削り出すと割れることがあります。荒加工後にアニールを入れると安定します。
- 荷重下の耐熱は 89℃ — 荷重たわみ温度は 0.45MPa で 210℃ ですが、1.80MPa では 89℃ まで下がります。高温で荷重を受ける部位には向きません。
他の材料との比較
| 比較対象 | PET との違い |
|---|---|
| POM | 耐衝撃性と靭性(伸び60%)は POM が上。硬さ・剛性・耐熱(連続100℃)・難燃性(自消性)は PET が上。吸水はどちらも小さい |
| PA6 | 吸水率で圧倒的に PET が有利(0.04% 対 1.8%)。耐衝撃性は PA6 が大きく上 |
| PBT | 同じポリエステル系。剛性・耐摩耗性・耐熱は PET が上。靭性(伸び200%超)は PBT が上 |
| PEEK | 耐熱・強度・耐薬品性は PEEK が圧倒的に上(連続260℃)。PET はコストで大きく有利 |
全材料の横並び比較は 樹脂・エンプラ 物性比較表 をご覧ください。
PET の物性表とお取り扱いについて
グレード別の物性表(PDF)はこちらからダウンロードできます
PET は現在、定尺品としての在庫のお取り扱いがありません。ご用途をお知らせいただければ、手配の可否と納期をお調べします。まずはお問い合わせください。
PET に関するよくあるご質問
切削用の PET はペットボトルの PET と同じですか?
同じポリエチレンテレフタレートですが、状態が違います。ペットボトルは透明な非晶性PETで、切削用は結晶化させた結晶性PET(TP-PEXなど)です。結晶性PETは白または黒の不透明で、硬く寸法安定性に優れます。
PET と POM はどちらを選べばよいですか?
硬さ・剛性・耐熱・難燃性を重視するなら PET、耐衝撃性と粘りを重視するなら POM です。PET は伸びが9%と小さく欠けやすいため、衝撃が加わる部品には POM が向きます。
PET は吸水しますか?
ほとんどしません。吸水率は23℃・24時間で0.04%で、PA6(1.8%)の40分の1以下です。湿度による寸法変化を嫌う精密部品に適しています。
PET は何℃まで使えますか?
連続使用温度は100℃が目安です。荷重たわみ温度は0.45MPaで210℃ですが、1.80MPaでは89℃まで下がります。荷重がかかる高温部位には向きません。数値は参考値です。
KIRIURI.COM で PET は買えますか?
現在、定尺品としての在庫のお取り扱いはありません。ご用途をお知らせいただければ手配の可否と納期をお調べしますので、お問い合わせください。グレード別の物性表PDFは無料でダウンロードいただけます。
出典
本ページの数値は、タキロンポリマーが公開する「物性資料 タキロンポリマー製品 関連物性」(p.82、2026年8月取得)の TP-PEX C777 の値からの転記です。原典に「記載数値は試験片厚さ5mmの実測値であって保証値ではない」と明記されています。正確な値はメーカーの最新データシートをご確認ください。