PI(ポリイミド)とは
PI(ポリイミド)とは|連続300℃に耐える樹脂の最高峰
PI(ポリイミド)は、連続使用温度 300℃ という樹脂として最高クラスの耐熱性を持つ材料です。明確な融点を持たず、高温でも軟化せずに形を保ち、その状態のまま摺動部品として働けることが最大の価値になります。デュポンの「ベスペル」が代表的な商標ですが、三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズの「ジュラトロン PI」など切削加工用の板・丸棒も流通しています。
PI(ポリイミド) の基本物性
| 項目 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 比重 | 1.4 | — |
| 引張強度 | 103 MPa | — |
| 伸び | 4 % | 粘りはない |
| 引張弾性率 | 3,897 MPa | — |
| 圧縮強度(5%変形) | 145 MPa | 高温でも荷重を受けられる |
| 曲げ強度 | 131 MPa | — |
| 曲げ弾性率 | 4,000 MPa | — |
| アイゾット衝撃値(ノッチ付) | 37 J/m | — |
| ロックウェル硬度 | M120 | — |
| 連続使用温度 | 300 ℃ | 樹脂で最高クラス |
| 荷重たわみ温度(1.820MPa) | 355 ℃ | — |
| 融点 | — | 融点を持たない |
| 線膨張係数 | 7.2×10-5/℃ | — |
| 吸水率(23℃水中飽和値) | 4 % | 吸水は大きい |
| 燃焼性 | UL94 V-0 相当 | — |
PI(ポリイミド) の特徴
1. 連続 300℃、融点を持たない
PI の存在意義がここにあります。連続使用温度 300℃ は PEEK(250〜260℃)やPPS(220℃)を上回り、樹脂の最高クラスです。さらに明確な融点を持たないため、温度が上がっても急に軟化して崩れるということがありません。荷重たわみ温度(1.820MPa)も 355℃ と、高温下でも荷重を受けられます。
2. 高温での摺動に強い
グラファイトや PTFE を配合したグレード(D7015G、D7040G、DU7000)では、潤滑剤が使えない高温・真空環境でも摺動部品として機能します。半導体製造装置や航空宇宙分野で PI が選ばれるのは、この「高温+無潤滑」という条件を満たせる樹脂が他にほとんど無いためです。
3. 粘りはなく、吸水は大きい
伸びは 4% と小さく、衝撃には強くありません。また吸水率は 23℃水中飽和値で 4% と大きく、湿度で寸法が動きます。精密なはめあいでは吸水後の寸法を見込む必要があります。
4. 価格は樹脂のなかで最高水準
PI は製造に手間がかかるため、樹脂としては非常に高価です。PEEK で足りる温度域であれば PEEK のほうが現実的で、PI は250℃ を超える領域や、真空・無潤滑という条件で初めて選ぶ材料になります。
PI(ポリイミド) の主な用途
- 半導体製造装置 — 高温プロセス部の治具、絶縁部品、シール
- 真空機器 — 無潤滑で摺動させる軸受、ブッシュ
- 航空宇宙 — 高温部のシール、ワッシャ、スラストワッシャ
- 産業機械 — 高温下のギヤ、ベアリングリテーナ
- 試験・分析機器 — 高温部の絶縁部品
PI(ポリイミド) の切削加工で注意すること
- 硬く脆い — 伸びが 4%と小さく、角部が欠けやすい材料です。切れ味のよい工具で軽い切込みを重ね、抜け際の送りを落としてください。
- 工具の摩耗が早い — グラファイト配合グレードでは特に工具が摩耗します。超硬工具やダイヤモンドコート工具を使い、こまめに刃先を確認してください。
- 材料単価が高い — 素材が高価なため、取り代の設計と歩留まりが仕上がりコストを大きく左右します。荒取りの段階から寸法計画を立ててください。
- 吸水による寸法変化 — 吸水率が飽和で 4%あります。高精度部品では加工後の吸湿も見込んでください。
他の材料との比較
| 比較対象 | PI(ポリイミド) との違い |
|---|---|
| ベスペル(デュポンPI) | 同じポリイミド系。ベスペルは焼結法によるデュポンの製品で、SP-1/SP-21 などのグレードがある。詳しくは ベスペルのページ をご覧ください |
| PEEK | 耐熱は PI が上(連続300℃ 対 250〜260℃)。PEEK は靭性・加工性・価格で有利。250℃以下なら PEEK が現実的 |
| PAI(ポリアミドイミド) | 強度は PAI が上(無充填で引張138 MPa)。耐熱は PI が上(300℃ 対 260℃) |
| PBI | 耐熱・圧縮強さは PBI が最高クラス。PI は入手性と加工性でやや有利 |
全材料の横並び比較は 樹脂・エンプラ 物性比較表 をご覧ください。
PI(ポリイミド) の物性表とお取り扱いについて
グレード別の物性表(PDF)はこちらからダウンロードできます
PI(ポリイミド) は現在、定尺品としての在庫のお取り扱いがありません。ご用途をお知らせいただければ、手配の可否と納期をお調べします。まずはお問い合わせください。
PI(ポリイミド) に関するよくあるご質問
PI とベスペルは同じものですか?
ベスペル(Vespel)はデュポンのポリイミド製品の商標で、材料としては PI です。PI にはほかにも三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズの「ジュラトロン PI」など切削加工用の板・丸棒があります。ベスペルについては 専用ページ をご覧ください。
PI は何℃まで使えますか?
連続使用温度は300℃が目安です。荷重たわみ温度(1.820MPa)は355℃で、明確な融点を持たないため高温でも急激に軟化しません。グレードにより異なりますので、数値は参考値としてご覧ください。
PI と PEEK はどちらを選べばよいですか?
250℃以下で足りるなら PEEK が現実的です。PEEK のほうが靭性・加工性に優れ、価格も大幅に安くなります。250℃を超える領域や、真空・無潤滑での摺動が必要な場合に PI を検討してください。
PI は摺動部品に使えますか?
使えます。グラファイトや PTFE を配合したグレードは、潤滑剤が使えない高温・真空環境でも摺動部品として機能します。半導体製造装置や航空宇宙分野での主要な用途です。
KIRIURI.COM で PI は買えますか?
ベスペル(デュポンのPI)はSP-1・SP-21ほか多数のグレードをお取り扱いしています。ジュラトロンPIなど他社のPI板・丸棒については、ご用途をお知らせいただければ手配の可否をお調べします。
出典
本ページの数値は、三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズが公開する「製品カタログ(日本語版)」物性表(p.20/21、2026年8月取得)のジュラトロン D7000 PI の値からの転記です。原典に「当社独自の方法で測定した絶乾時の代表値であり保証値ではない」と明記されています。正確な値はメーカーの最新データシートをご確認ください。