PPSU(ポリフェニルサルホン)とは

PPSU(ポリフェニルサルホン)とは|蒸気滅菌を繰り返せる非晶性スーパーエンプラ

PPSU(ポリフェニルサルホン)は、スルホン系樹脂のなかでもっとも靭性が高い非晶性のスーパーエンジニアリングプラスチックです。最大の持ち味は繰り返しの高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)に耐える耐加水分解性で、滅菌を何度も通す医療器具や、熱水・蒸気に触れる配管部品に使われます。透明性のある琥珀色で、難燃性 UL94 V-0 も併せ持ちます。

掲載数値は参考値です。保証値ではありません。 測定規格・試験片形状・グレード・ロットにより変動します。設計・採用にあたっては、メーカー発行の最新データシートでご確認ください。

PPSU の基本物性

TPS-PPSU NC(東レプラスチック精工)の物性値(参考値)
項目数値備考
比重(23℃)1.29スーパーエンプラでは軽い部類
引張強度70 MPa
引張伸び60〜120 %非晶性樹脂として非常に大きい
曲げ強度105 MPa
曲げ弾性率2.41 GPa
アイゾット衝撃値(ノッチ付)694 J/mスーパーエンプラでは突出して高い
荷重たわみ温度(1.82MPa)207 ℃
ガラス転移点220 ℃非晶性のため融点を持たない
吸水率(23℃・24時間)0.4 %PEEK より高い
燃焼性(UL)V-0
体積固有抵抗1015 Ω·cm

PPSU の特徴

1. 繰り返しの蒸気滅菌に耐える

PPSU の代表的な用途が医療器具なのは、耐加水分解性が非常に高いためです。高圧蒸気滅菌を何百回と繰り返しても、強度低下やクラックが起きにくい性質を持ちます。PEI(ウルテム)も蒸気滅菌に使われますが、靭性の差から PPSU が選ばれる場面があります。

2. 衝撃に非常に強い

アイゾット衝撃値 694 J/m は、スーパーエンプラのなかでは突出した値です。PEEK(一般に 50〜100 J/m 程度)や PPS と比べても桁が違い、落下や打撃が想定される部品でも欠けにくいのが特徴です。非晶性樹脂でありながら靭性が高い点が、同じスルホン系の PSU・PES との差になります。

3. 耐熱は荷重たわみ温度 207℃

荷重たわみ温度(1.82MPa)207℃、ガラス転移点 220℃ と、非晶性樹脂としては高い耐熱を持ちます。ただし非晶性のためガラス転移点を超えると急激に軟化します。連続して高温にさらす用途では、結晶性の PEEK や PPS のほうが扱いやすい場合があります。

4. 難燃 UL94 V-0

添加剤に頼らず UL94 V-0 の難燃性を持ちます。航空機内装や鉄道車両など、火災時の安全基準が厳しい分野でも使われます。

PPSU の主な用途

  • 医療機器 — 蒸気滅菌を繰り返す手術器具のケース、トレイ、ハンドル
  • 配管・流体機器 — 熱水や蒸気に触れる継手、バルブ部品
  • 半導体製造装置 — 薬液に触れる治具、ウェハキャリア
  • 航空機・鉄道 — 難燃性が要求される内装部品
  • 食品機械 — 蒸気洗浄を伴うライン部品

PPSU の切削加工で注意すること

  • 非晶性ゆえのソルベントクラック — 残留応力が溜まった状態で切削油や有機溶剤に触れると、微細な割れが入ることがあります。切削油の選定と洗浄剤に注意してください。
  • 加工前後のアニール — 精度を要する部品では、荒加工と仕上げの間にアニールを挟んで残留応力を逃がすと寸法が安定します。
  • 吸水による寸法変化 — 吸水率 0.4% と、PEEK(0.1〜0.5%)と同程度ですがPPS や PTFE より高めです。高精度部品では加工後の吸湿も見込んでください。
  • 切りくずの絡み — 伸びが大きく粘るため、切りくずが長く繋がりやすい材料です。チップブレーカーのある工具や、送りの調整で分断させると仕上がりが安定します。

他の材料との比較

比較対象PPSU との違い
PEEK耐熱・耐薬品性は PEEK が上(連続260℃)。衝撃強さと透明性は PPSU が優位。PPSU は非晶性、PEEK は結晶性
PEI(ウルテム)どちらも非晶性・難燃・蒸気滅菌可。引張強度は PEI(124 MPa)が上、衝撃強さと靭性は PPSU が大きく上回る
PSU・PES同じスルホン系。耐熱は PES が高いが、靭性・耐加水分解性は PPSU が優れる
PPS耐熱・耐薬品性・低吸水は PPS が上。衝撃強さと透明性は PPSU が優位

全材料の横並び比較は 樹脂・エンプラ 物性比較表 をご覧ください。

PPSU の物性表とお取り扱いについて

グレード別の物性表(PDF)はこちらからダウンロードできます

PPSU は現在、定尺品としての在庫のお取り扱いがありません。ご用途をお知らせいただければ、手配の可否と納期をお調べします。まずはお問い合わせください。

PPSU に関するよくあるご質問

PPSU とポリサルホン(PSU)は同じものですか?

別の材料です。どちらもスルホン系の非晶性樹脂ですが、PPSU(ポリフェニルサルホン)のほうが耐熱・靭性・耐加水分解性のいずれも上回ります。滅菌を繰り返す医療器具では PPSU が選ばれます。

PPSU はオートクレーブに何回耐えられますか?

耐加水分解性が高く、繰り返しの高圧蒸気滅菌に耐える材料として知られています。ただし実際の回数は温度・時間・洗浄剤・部品形状によって変わるため、具体的な回数は使用条件でのご確認をおすすめします。

PPSU は透明ですか?

琥珀色の透明性があります。中が見える必要のある部品にも使えますが、無色透明ではありません。

PPSU は何℃まで使えますか?

荷重たわみ温度(1.82MPa)は207℃、ガラス転移点は220℃です。非晶性樹脂のためガラス転移点付近で急に軟化します。連続高温での使用にはPEEKやPPSのほうが向く場合があります。数値は参考値です。

KIRIURI.COM で PPSU は買えますか?

現在、定尺品としての在庫のお取り扱いはありません。ご用途をお知らせいただければ手配の可否と納期をお調べしますので、お問い合わせください。グレード別の物性表PDFは無料でダウンロードいただけます。

出典

本ページの数値は、東レプラスチック精工が公開する切削用素材「PPSU NC」の物性表(2026年8月取得)からの転記です。数値は測定規格・グレード・ロットにより変動します。正確な値はメーカーの最新データシートをご確認ください。

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