PVC(塩化ビニル)とは
PVC(塩化ビニル)とは|自消性と耐薬品性を安価に得られる汎用樹脂
PVC(塩化ビニル)は、耐薬品性と自消性(燃え広がりにくさ)を安価に得られる汎用樹脂です。めっきラインの治具や薬液槽、配管部材として長く使われてきました。切削加工用には可塑剤を含まない硬質塩ビが使われます。ただし耐熱は 60〜76℃ と低く、加工時に発生するガスへの配慮も必要な材料です。
PVC(塩化ビニル) の基本物性
| 項目 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 比重(23℃) | 1.30〜1.58 | 汎用樹脂では重い |
| 引張強度 | 41〜52 MPa | — |
| 引張伸び | 40〜80 % | — |
| 曲げ強度 | 69〜110 MPa | — |
| 曲げ弾性率 | 2.07〜3.45 GPa | 剛性は高め |
| 圧縮強さ | 55〜90 MPa | — |
| アイゾット衝撃値(ノッチ付) | 22〜118 J/m | グレード差が大きい |
| 吸水率(23℃・24時間) | 0.04〜0.4 % | 低い |
| 荷重たわみ温度(1.82MPa) | 60〜76 ℃ | 耐熱は低い |
| 線膨張係数 | 5.0〜10.0×10-5/℃ | — |
| 絶縁耐力(3mm) | 14〜20 MV/m | — |
| 体積固有抵抗 | 1016 Ω·cm | 絶縁性は良好 |
PVC(塩化ビニル) の特徴
1. 耐薬品性と自消性を安価に得られる
PVC の存在意義はここにあります。酸・アルカリ・塩類に強く、塩素を含むため自消性を持ちます。PP も耐薬品性に優れますが可燃性であるため、燃え広がりを避けたい薬液まわりでは PVC が選ばれます。
2. 剛性が高く、寸法が安定している
曲げ弾性率 2.07〜3.45 GPa と、PP(1.4 GPa)や PE-HD(2.1 GPa)より硬く、たわみにくい材料です。吸水率も 0.04〜0.4% と低く、板ものを組んで構造を作る用途に向きます。
3. 耐熱が低い
PVC の弱点です。荷重たわみ温度(1.82MPa)は 60〜76℃ しかなく、温水や高温の薬液には使えません。温度が上がる用途では PP(連続100℃)や PVDF(連続100℃)を検討してください。
4. 加工時のガスに配慮が要る
塩素を含むため、過熱すると塩化水素ガスが発生します。切削で異常に発熱させないこと、換気を確保することが必要です。溶接や熱加工を行う場合は特に注意してください。
PVC(塩化ビニル) の主な用途
- 表面処理・めっき — 治具、ラック、薬液槽、仕切り板
- 化学・水処理 — 配管部材、タンク部品
- 建築 — 内装部材、ダクト
- 電気 — 絶縁部品、カバー
- 看板・什器 — 加工しやすさを活かした造作
PVC(塩化ビニル) の切削加工で注意すること
- 過熱させない — 切削点が高温になると塩化水素ガスが発生します。切込みと送りを抑え、十分な冷却と換気のもとで加工してください。
- 刃物への溶着 — 荷重たわみ温度が 60〜76℃ と低く、熱がこもるとすぐ軟化して刃物に付きます。切りくずの排出が要点です。
- 粉じん対策 — 乾式で削ると微細な粉が出ます。集じんを併用してください。
- グレード差が大きい — 硬質・耐衝撃など配合の違いで物性が大きく変わります(アイゾット 22〜118 J/m)。実際に使うグレードのデータでご確認ください。
他の材料との比較
| 比較対象 | PVC(塩化ビニル) との違い |
|---|---|
| PP | 耐熱は PP が上(連続100℃ 対 荷重たわみ60〜76℃)、軽さも PP が上。自消性と剛性は PVC が上(PP は可燃性) |
| PE-HD | 耐衝撃性と低温特性は PE-HD が上。剛性・自消性は PVC が上 |
| PVDF | 耐熱・耐薬品性・強度はすべて PVDF が上。PVC は圧倒的に安価 |
| ABS | 切削性・接着性は ABS が上。耐薬品性・自消性は PVC が上 |
全材料の横並び比較は 樹脂・エンプラ 物性比較表 をご覧ください。
PVC(塩化ビニル) の物性表とお取り扱いについて
グレード別の物性表(PDF)はこちらからダウンロードできます
PVC(塩化ビニル) は現在、定尺品としての在庫のお取り扱いがありません。ご用途をお知らせいただければ、手配の可否と納期をお調べします。まずはお問い合わせください。
PVC(塩化ビニル) に関するよくあるご質問
切削用の PVC は水道管の塩ビと同じですか?
同じ硬質塩ビ系ですが、切削用は可塑剤を含まない硬質グレードで、板・丸棒の形で供給されます。軟質塩ビ(ホースなど)とは可塑剤の有無で性質が大きく異なります。
PVC は何℃まで使えますか?
荷重たわみ温度(1.82MPa)は60〜76℃です。温水や高温の薬液には使えません。温度が上がる用途には PP や PVDF を検討してください。数値は参考値です。
PVC の切削加工で気をつけることは何ですか?
過熱させないことです。塩素を含むため、切削点が高温になると塩化水素ガスが発生します。切込みと送りを抑え、十分な冷却と換気のもとで加工してください。刃物への溶着と粉じん対策も必要です。
PVC は燃えますか?
自消性です。塩素を含むため火源を離すと燃焼が止まります。PP や PE が可燃性であるのに対し、燃え広がりを避けたい用途では PVC が選ばれます。
KIRIURI.COM で PVC は買えますか?
現在、定尺品としての在庫のお取り扱いはありません。ご用途をお知らせいただければ手配の可否と納期をお調べしますので、お問い合わせください。物性表PDFは無料でダウンロードいただけます。
出典
本ページの数値は、東レプラスチック精工が公開する切削用素材「PVC NC」の物性表(2026年8月取得)からの転記です。PVC は配合によって物性の幅が大きいため、原典でも範囲で示されています。実際に使用するグレードのデータをメーカーの最新データシートでご確認ください。