PVDF(ポリフッ化ビニリデン)とは
PVDF(ポリフッ化ビニリデン)とは|強度と耐薬品性を両立したフッ素樹脂
PVDF(ポリフッ化ビニリデン)は、フッ素樹脂のなかではもっとも機械的強度が高い材料です。PTFE や PFA が柔らかく荷重に弱いのに対し、PVDF は引張降伏応力 57 MPa、曲げ弾性率 2,100 MPa と、エンプラに近い剛性を持ちます。耐薬品性と強度を両立させたい薬液配管や半導体製造装置の部品に適しています。
PVDF の基本物性
| 項目 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 比重 | 1.78 | フッ素樹脂では軽い部類 |
| 引張降伏応力 | 57 MPa | フッ素樹脂のなかで最高水準 |
| 引張破壊時呼びひずみ | 20 % | — |
| 曲げ応力 | 67 MPa | — |
| 曲げ弾性率 | 2,100 MPa | PTFE・PFA より格段に硬い |
| 圧縮降伏応力 | 76 MPa | — |
| ロックウェル硬さ(Rスケール) | 116 | — |
| 荷重たわみ温度(1.80MPa) | 70 ℃ | — |
| 連続使用温度 | 100 ℃ | PTFE・PFA(260℃)より大幅に低い |
| 耐燃性 | 自消性 | — |
| 吸水率 | 0.01 % | ほとんど吸水しない |
| 誘電率(1MHz) | 6.3 | フッ素樹脂としては高い |
PVDF の特徴
1. フッ素樹脂のなかで強度・剛性が最も高い
引張降伏応力 57 MPa、曲げ弾性率 2,100 MPa は、PTFE(引張 20〜30 MPa 前後)やPFA(25〜35 MPa)を大きく上回ります。耐薬品性を確保しつつ荷重も受けたい部品には、フッ素樹脂のなかで PVDF が第一候補になります。
2. 耐薬品性は高いがアルカリには弱い
酸・有機溶剤・ハロゲンに対して安定で、超純水にも使われます。ただし強アルカリや強極性溶媒(アセトン、DMF など)には侵される点がPTFE・PFA との明確な違いです。薬液を選ぶ材料であることに注意してください。
3. 耐熱は 100℃ まで
連続使用温度は 100℃ で、PTFE・PFA の 260℃ とは大きな差があります。ビカット軟化温度は 166℃(A法)ですが、荷重たわみ温度(1.80MPa)は 70℃ です。高温の薬液配管には PFA や PTFE を検討してください。
4. 自消性で燃え広がりにくい
耐燃性は自消性です。PE・PP といった汎用樹脂が可燃性であるのに対し、PVDF は火源を離すと消える性質を持ちます。
PVDF の主な用途
- 半導体製造装置 — 薬液配管、継手、槽、ウェハ関連治具
- 化学プラント — ポンプ部品、バルブ、ノズル
- 水処理 — 超純水・薬注ラインの部品
- 食品・医薬 — 接液部品
- 電気・電子 — 圧電性を利用したセンサ用途(フィルム)
PVDF の切削加工で注意すること
- 比重が重く切削抵抗がある — 比重 1.78 とフッ素樹脂のなかでは扱いやすい部類ですが、PE・PP のつもりで条件を組むと負荷がかかります。
- 線膨張率が大きい — 12.9×10-5·K-1と金属の10倍前後です。加工熱で寸法が動くため、仕上げは温度が落ち着いてから測定してください。
- 切削温度を上げすぎない — 過熱するとフッ化水素を含むガスが生じるおそれがあります。十分な冷却と換気のもとで加工してください。
- アニールで寸法を安定させる — 結晶性樹脂のため、加工後の後収縮が問題になる高精度部品ではアニールが有効です。
他の材料との比較
| 比較対象 | PVDF との違い |
|---|---|
| PTFE | 耐熱・耐薬品性(特にアルカリ)は PTFE が上(連続260℃)。強度・剛性・寸法安定性は PVDF が大きく上回る |
| PFA | 耐熱は PFA が上(260℃ 対 100℃)。強度・剛性は PVDF が上。緻密さを要する薬液部品は PFA、荷重を受ける部品は PVDF |
| PP | 耐薬品性・強度・難燃性は PVDF が上。PP は圧倒的に軽く安価で、耐アルカリ性では PP が有利 |
| POM | 強度・剛性は同程度。耐薬品性(特に酸)は PVDF が大きく上。摺動性とコストは POM が有利 |
全材料の横並び比較は 樹脂・エンプラ 物性比較表 をご覧ください。
PVDF の物性表とお取り扱いについて
グレード別の物性表(PDF)はこちらからダウンロードできます
PVDF は現在、定尺品としての在庫のお取り扱いがありません。ご用途をお知らせいただければ、手配の可否と納期をお調べします。まずはお問い合わせください。
PVDF に関するよくあるご質問
PVDF はフッ素樹脂ですか?
フッ素樹脂です。ただし PTFE・PFA と違い、分子内に水素を持つ部分結晶性の樹脂で、強度・剛性が高い代わりに耐熱性(連続100℃)と耐アルカリ性は劣ります。
PVDF はどんな薬品に弱いですか?
強アルカリと、アセトン・DMF などの強極性溶媒に侵されます。酸・有機溶剤・ハロゲン・超純水には安定です。薬液が決まっている場合は、実条件でのご確認をおすすめします。
PVDF は何℃まで使えますか?
連続使用温度は100℃が目安です。荷重たわみ温度(1.80MPa)は70℃、ビカット軟化温度(A法)は166℃です。より高温が必要な場合は PFA・PTFE が候補になります。数値は参考値です。
PVDF と PTFE はどちらを選べばよいですか?
荷重や寸法精度が要る部品は PVDF、耐熱と耐アルカリ性が要る部品は PTFE が向きます。PTFE は柔らかく荷重で変形しやすいため、機械部品としては PVDF のほうが扱いやすくなります。
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現在、定尺品としての在庫のお取り扱いはありません。ご用途をお知らせいただければ手配の可否と納期をお調べしますので、お問い合わせください。グレード別の物性表PDFは無料でダウンロードいただけます。
出典
本ページの数値は、タキロンポリマーが公開する「物性資料 タキロンポリマー製品 関連物性」(p.83、2026年8月取得)の PVDF F2 の値からの転記です。原典に「記載数値は試験片厚さ5mmの実測値であって保証値ではない」と明記されています。正確な値はメーカーの最新データシートをご確認ください。